拘束されし者 | 今回共有する記憶は、FreyMENOWとしての彼女の思い出になる。 |
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そしてそれは、彼女自身の小中学生時代の記憶でもある。 |
さあ、時間も残り僅かだ。前置きも何も無いが、早速記憶にダイブしよう。 |
FreyMENOWは、日本のアーティスト、作詞家、ストーリーテラー。 |
デビューのきっかけは、歌手としてではなく、子役として。 |
卯月神楽は小学生の頃から演劇が大好きだった。 |
高学年になって豊洲に越してきてからもそれは変わらず。 |
転校先の区立小学校で出逢った、演劇好きの如月音羽と親友になる。 |
その後、神楽は両親の教育方針もあり、ミッション系の私立女子中へ進学。 |
如月音羽もまた、同じ中学へと進学し、二人は絆を深めていった。 |
中学に進学してからも、お互い演劇部に入り、日々部活動にいそしむ。 |
そして、すぐに運命のオーディションが訪れることになる。 |
このオーディションで神楽は子役として合格し、音羽は落選した。 |
子役ではあるが、歌唱が重要な要素となっている役割だったため―― |
彼女の持ち前の歌唱力が強力な武器となった。 |
そしてこの頃から、音羽との関係には少し変化が出てくる。 |
物理的に遊ぶ時間がなくなり一緒に遊ぶ機会が減ったということも確かにある。 |
けれどもやはり、自分が落選し、神楽が採用されたことは大きかったようだ。 |
表面上は否定しつつも、やはりそういうドロッとしたものは出てしまう。 |
二人は徐々に話す機会も減り、疎遠になっていった。 |
神楽はといえば、ドラマ収録後にスカウトがあり―― |
ここから本格的に、FreyMENOWとしての活動が始まることになる。 |
スカウトを受けた事務所はサンセットミュージック。小規模な芸能事務所だ。 |
それもあって、大々的な活動ができたわけではなかったが―― |
その分、かなりの部分で自由にやらせてもらうことができた。 |
そしてFreyMENOWは、着実に、コアなファンを増やしていくことになる。 |
一方で、プライベートについてはなかなかの修羅場続きだ。 |
音羽とは疎遠になって遊ぶこともなくなり。 |
寄ってくる友達は芸能人としての魅力に取り憑かれている。 |
無駄にお嬢様学校ということもあり、下町育ちの神楽には肌に合わず―― |
しかし大企業社長令嬢という格もあるため、周囲は距離感がつかめない。 |
よって、卯月神楽は割と浮いた存在だった。 |
それもあって、ガブリエラの境遇を理解できるのかもしれない。 |
家庭では、父親が頑なに芸能デビューを反対し続けていた。 |
父親本人には自覚がなくとも、周囲が自粛する行動をとるため―― |
スポンサー番組などから見送りされたりする事も何度かあった。 |
それでいて、周囲からは大企業の社長を父に持つという偏見もあった。 |
その為、何か大きな事を為し得れば、それはコネだろうと揶揄された。 |
しかしそんな中でも彼女は精力的に活動を続けていた。 |
沢山のファンと共に、自分の世界を描き続ける。 |
それこそが、彼女にとっては何物にも代え難い幸せだったからだ。 |
卯月神楽は少なくとも、サンセットミュージックの時代においては―― |
自身の創作だけを信じて、突き進んできたのだ。 |
ライブラリ EOF/. |